鳥山明とジャンプシステムとその弁証法的解決

 

東大2年生(経済学部内定)の者です。周囲の優秀な友人と何もできない自分を比べ、惨めになってしまうことがよくあります。こんな自分を克服したいのですが、どのような処方箋が考えられ

Mr.サタンは鳥山氏の投影であり、初連載のDr.スランプの当初主役だったがすぐにその座を降ろされた則巻せんべえを引き継いでいた。ジャンプシステムそのものである孫悟空と共に戦うラストはそれ故感動的だった

2014/11/10 00:20

 

 

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とりあえずザブザ編までは傑作なので、そこまでは読むといいと思います

2014/11/10 10:03

 

NARUTO、おわっちゃいましたね。あと、僕らのヒーローアカデミア、かなり面白くなってきてて、相撲、ソーマもダレること無く、盤石だなあと。なぜか2日続けて週刊少年ジャンプ関係のはてブコメントがトップをとれたので、ドラゴンボールについての話をします。今回は鳥山明氏とジャンプシステム、それらの対立と弁証法的な解決まで。すげー流し書きなのですいません

鳥山明氏はデビュー作「Dr.スランプ」を連載する当初、則巻千兵衛という発明家に主題をあてて物語を始めるつもりだったような気がします。それは千兵衛自体が中年男性であり、作者である鳥山氏の心情を投影しやすかったということも意識しているでしょうし、モデリングをやっていた趣味人である氏を反映した「発明家」という職業(周りからちょっと白い目でみられるところなんかを含めて)でも明らかでしょう。当初、おそらく「Dr.スランプ」の初期プロットは「発明の天才が次々と作品を発明するが、自身の卑近な欲望に負けて失敗する」というようなものだったのだと思います。そういうエピソードが結構散見されますし、まあ一人ドラえもんとか、クリエイティブなこち亀みたいな路線。

しかし、そこから「ジャンプシステム」の介入によるストーリーの大幅な修正が加えられていきます。週刊少年ジャンプの、アンケートの評価が低ければ打ち切り、高ければ逆に終われないというシステムですね。それによって、千兵衛よりも第一話で作り出したアシスタントロボット「アラレ」の方に人気が高まっていることを知ると、編集長はそちらに視点を移したエピソードへの修正を支持していきます。(ちなみに私はこのシステムに対して「作者の意向を無視して行ってる」等といった批判にはまったく反対です。)結果的に、この路線は大当たりし、アニメ化した際には「Dr.スランプアラレちゃん」という、まさに主人公の立場を乗っ取ってしまいます。

しかしアラレちゃんは、ロボットで生まれたため内面を持っておりません。しかし強大なパワーを持ち、たくさんの友達を従える圧倒的な求心力をもって現れます。ちょうどこの強大なパワーと、我々を一体化させる力というのは、そのままアンケートという個々の声の集合意志が集まって物語を進めていく「システム」そのものとして読むことができます。(ちなみにこのアンケートシステムこそ、のちのAKB総選挙や果ては政治まで、日本における「民主主義」のプロトモデルになっているという話は、後に構想しているONE PIECE論をお待ちください)

そしてこの設定を、鳥山氏は次作である「ドラゴンボール」の主人公「孫悟空」に引き継がせます。孫悟空も同じように内面をもたず、しかし強いパワーをもち、仲間を増やしていきます。そして、彼は必殺技として「元気玉」という「全ての人にエネルギーを分け与えてもらい、それを集める」というまさに「アンケート投票」そのものの技を使います。

もちろん編集の指示もある中で、魅力的なストーリーとキャラを生み出した鳥山氏の天才的な才能は言うまでもありません。それまでのジャンプが持っていた絵柄を「原哲夫などの書き込みの多いキャラクターで実在感を出させる」ものと「キン肉マンのようなシンプルな線で子供が真似しやすいキャラ」と大きく二分するなら、2つのテーマをキャラをまず立体的なイメージで想定し、それをシンプルな線で描くことでシンプルさと質量を伴うという2つを高い水準で維持した彼の絵は、後のジャンプのひな形になっていくのですから。

 

では、そのシステム上を動いていく中で、千兵衛はどうしたのでしょうか。自分はこの則巻千兵衛を引き継いだキャラクターこそ、「ドラゴンボール」のミスター・サタンだと思います。サタンは当初、セル戦の噛ませ犬のために登場し、結果的に世界を救った救世主だと誤解されて栄誉を得ます。ちょうどこの点は「本当はシステム(悟空たち)が動いただけなのに(編集にいわれたまま書いてるだけなのに)、栄誉を得てしまっている」という鳥山明の心情と重なる状況を重ねられていきます。そして魔人ブウ編で「自分の飼い犬を攻撃されて激昂する」というシーンが登場します。これは前作Dr.スランプで、則巻千兵衛にあったエピソードをそのまま使い回ししたものです。

 

そして魔人ブウ最終戦、ベジータは悟空に元気玉を作ることを提案し、エネルギーを集めさせることを提案します。しかし、彼等のみでは地球の人々は賛同しない。彼等システムは内面を持たない以上、人に働きかけるものを持たないのです。しかし、そこに突如、ミスター・サタンの声が聞こえた瞬間、人類はサタンを応援し、元気玉は完成します。これはまさにサタンの持っていた(つまり鳥山氏を悩ませていた)「(空虚な)栄誉」こそが、最後の力となったことを示しています。こうすることで、鳥山氏は自身の抱えている問題をストーリーに組み込むことで解決しようとしたのです。

 

告知:11月24日に東京で行われる「文学フリマ」内の「invert vol.2」にて「少し暇そうにしているキャラを連れ出したい」というタイトルで寄稿しています。これは漫画の「キャラ」を中心にその脱物語性というものを「新井素子」「涼宮ハルヒ」「あまちゃん」などを題材に論じています。是非よろしくお願いします。

 

 

 

 

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